階層性問題
ウィキペディア フリーな encyclopedia
階層性問題 (かいそうせいもんだい、英: hierarchy problem) は物理学、特に素粒子物理学や高エネルギー物理学の分野が抱える未解決問題の一つである。
なぜ重力は他の3つの基本相互作用と比べて突出して弱いのか。 |
場の量子論において、理論の中に定数として導入されるパラメータ(結合定数や質量)は、繰り込みと呼ばれる手法によって、実験で実際に得られるパラメータと結びつけられる。通常は繰り込み後のパラメータは元のパラメータと強く関係しているが、ある場合には、元のパラメータとその量子補正が巧妙に打ち消しあうような状況が起こりうる。そういった状況から、もしパラメータがわずかにずれれば即座にこのような打ち消しはなくなってしまうため、あるパラメータに対してそのような打ち消しが起こっていると考えた場合、そのパラメータはあたかも量子補正と合致するよう精密に選択されている(ファインチューニング(英語版))ように見える。これは自然さ(英語版)の観点とも関係し、問題とみなされている。
階層性問題に現れる繰り込みを直接扱うのは困難である。なぜならそのような量子補正に現れる二次発散は、繰り込みにおいてミクロスケールの物理が寄与するからである。現在考案されている最もミクロな物理である量子重力理論について、現実の問題を扱えるほど具体的な部分はほとんど究明されていない。従って現在は、ファインチューニング無しで階層性問題を解決するような何らかの物理現象を、仮定として導入するアプローチが主流である。